パートナーに対して誠実であるということ

「気軽さと忠誠心を兼ね備えてる」

Tくんをこう評したのはTくんの大親友Iさんですが、実際のところ、恋人としてのTくんはそんな人でした。

「自分がどういう人間か知ってもらいたい」
Tくんから、これまでの職歴や家族の話のほか、過去の恋愛遍歴果ては風俗経験まで、決して綺麗じゃない話もひっくるめて全てを告白されたのは、付き合い始めて未だ間もない頃。

聞いたその時は物凄くびっくりしたけれど、後から考えると「自分にも恋人にも嘘をつかない」実に彼らしい行動だなと思ったのでした。

「俺、全部話しちゃうから直ぐ振られるんです」
苦笑いをしながら打ち明けてくれたTくん。
私からしてみたら、とてつもなく信頼できる行動なのだけど、「言わないで」と思う女性がいるのも理解できます。
相手が受け止めきれないであろう過去は、それが相手と出会う前のものであるならば、必ずしも打ち明ける必要はないと思うからです。

そんなTくんなので、付き合っている期間中においては、何でもシェアしてくれました。
もちろんその中には、「これを言ったら嫌がられるかな」「この話をしたら怒られるかも」とTくんが思ったうえで伝えてくれた内容もあった筈です。
だけど、彼は正直に伝え続けてくれました。
「嘘をついたことで嫌な思いをさせるくらいなら全部伝えたい」
実際にTくんが言っていたこの言葉が、彼の行動の前提にあったのだと思います。
事実、その内容を聞いて悲しんだことも怒ったこともあったけれど、そうした気持ちを伝えることは何より大事なことだし、もし課題が表出したのであれば、話し合えばいいだけのこと。
Tくんとはそんなお付き合いができていました。

Tくんと別れることになった理由は、今回改めて振り返ってみても色々あるのですが、ここでは伏せることにします。

ただ、「誠実さ」に関して言えば、Tくんは最高の彼氏でした。
だから私はTくんのことを信頼することができていました。

もう少しだけ続きます。